サブタイトルは『ありのままの自分で気持ちよく生きるための100の言葉』。テレビに出てくる平野レミさんが話しかけてくれるような本なのかなと読んでみました。それに、平野レミさんって、私の家族にはすごい人気なんです。

 大声でおしゃべりする姿。大胆に手際よく料理する姿。「食べられるもの同士を組み合わせるのですから、食べられないものができあがることは滅多にありません」「料理はね、最終的に口の中で帳尻が合えばいいのよ」「たいてい大丈夫」「失敗したら、あははって笑っちゃいましょう」 そんな姿勢が家族に受けているみたいです。

 私は平野レミさんがシャンソン歌手として歌番組に出ているところを見たことがありませんし、「手でトマトをぐちゃっとつぶ」したNHKの「きょうの料理」も見たことはありません。でも、私の母はきょうの料理のテキストを何冊か持っていましたので、小さい頃に母の隣で見ていたかもしれません。覚えていませんが……

 面白い人だなと思ったのがテレビ朝日が深夜に放送していたマシュ―の番組に出演したときでした。ケータリングで食事を持ってくるという想定のコーナーです。そこで大胆に料理を作って見せるのですが、早口で、かつ大声でおしゃべりをマシューに仕掛けるのが面白かったのです。

 この番組の中で、フライパンの蓋を立てかけられる「レミパン」も紹介されていました。使った蓋は直前まで料理に使われていて、裏には水滴や料理がはじけたのが付いています。そのまま料理台に置くと、台がべちゃべちゃになりますし、といって裏側に置こうとすると手が触れてやけどしそうです。キッチンの壁に立てかけようとしても滑ってひっくり返ってしまいます。ですのでこのレミパンはいいアイディアだと思いました。思ったけれども購入するというところまではいきませんでした。

 レミさんは家族に食事を作ってあげるのが好きなのですね。「ずっと誰かのために料理を作ってきました」そして、結婚で「料理の腕を上げ」て、子どもが生まれて「食べ物のことを真剣に考える糸口」になったそうです。そして「誰よりもまず自分が『おいしい!』と思わないと」

 これまでの本や雑誌、新聞やウェブサイトに掲載されたものから選び、書き下ろしの文章も8つ入っていて、夫の和田誠さんが亡くなった後、息子たちやお嫁さんたちから助けられてきて今に至っていることもわかりました。テレビ番組でレミさんとお嫁さんたちが出演しているところを見かけるのですが、いつもうまくやっているのだろうかと心配になって見ています。でも、この本を読むとそんな心配はなさそうです。レミさんのご家族をなぜか応援したくなっているのです。

第1章 私の生き方  私は私よ

第2章 私とお料理  とにかく楽しむの!

第3章 私と子育て  息子のおかげで私はうんと成長できた。

第4章 私と家族   みんないいヤツね!

第5章 私と和田さん 本を開けばまた和田さんに会える。

 100のエッセイ(つぶやき)が5章に分けられていて、それぞれの章の冒頭にもお話しがかかれています。ですので105の生きるためのヒントがありました。

 文中に朝野ペコさんのイラストがいいタイミングで差し込まれていますし、カメラマンが撮った写真やご自身で持っていた写真をみるとレミさんの歴史がわかるような気がします。冒頭に、レミさんが電話している声が大きくて、外にでかけようとしていた和田さんが袋文字で注意を書いた紙を持って戻ってきた話しがありました。どのように書かれていたのかと気になっているとその写真も後ろに載っていました。家庭のしあわせの中はレミさんの素敵な料理で成り立っていましたが、それだけではなくて和田さんの芸術作品もあったのです。

 そして、本の表紙には木村セツさんが貼り紙で作ったレミさんの顔が描かれていました。一目でレミさんだとわかります。本屋さんでこの本を探して、エッセイコーナー、女性作家コーナー、料理コーナーを何度も行き来したのですが結局わからず、ウェブ注文で本屋さん受け取りで手に入れました。

※写真は2021年10月に東京オペラセンターアートギャラリーで開催された「和田誠展」での風景です。和田さんの近くにレミさんがいて、ここに飾られていた作品ができたのだろうなと思いながら観ていたことを思い出しました。

(2024年11月21日)