タイトルは「アット・ザ・ベンチ」。5つのエピソードによるオムニバス形式の映画。川辺のベンチに座っている人々の会話で物語が進んでいきます。あくまでも主役は人間模様ですので、場所を示す「アット・ザ・ベンチ」でもいいのですが、話しが進んでいくとベンチが前に出てき過ぎて主役が「ベンチ」になってしまう一瞬があります。起承転結の転をそんなに突拍子の無いものにしたいのなら、タイトルも思い切って「ベンチ」にしてしまえばいいのに……
川辺に一つだけ残されたベンチ。以前は公園でベンチも一つだけではありませんでした。
夕暮れに幼馴染の男友達をなじみのベンチに呼び出した女性。何気ない会話は「残り物」に移っていきます。女性のお母さんは幼馴染のことも知っています。お母さんから帰ってくるようにと電話があり、幼馴染も夕食に誘われて、ベンチを離れていきます。
お昼をスーパーで買ってきてベンチに座って食べようとする同棲している雰囲気の若い男女。ちょっとしたことで別れたほうがいいのかまで話しが飛んでしまうややこしいカップル。そこに、いつもこのベンチでお昼のパンを食べるおじさんがやってきて、話しに加わっていきます。
雨が降ってもベンチを守っているという女性は田舎から好きな人を追って家出してきたようです。妹は偶然に姉を見つけて連れ帰ろうとしますが、結局姉といっしょにベンチを守ることになります。
そのベンチが実は異星人か異次元人で、ベンチの子供の兄妹が親を連れ戻そうとするストーリー。それが映画の撮影だったという話し。
最後に幼馴染がまたベンチに戻ってきて何気ない会話がまたはじまります。だぶん、長い時間が経っていて、一緒に暮らしている雰囲気です。夕方にこのベンチで落ち合って家に戻っていきます。
どれも突飛なのだけど、なかでも4番目がぶっ飛んでいます。これだけ監督自身の脚本です。自分で撮りたかったストーリーなのでしょうか。
でも私にはあっちの方に行き過ぎて、付いていけない。
エピソード4はなくてもいいじゃん。そのかわり、幼馴染の二人に赤ちゃんができて、お母さんがスーパーに買い物に行っている間に留守番しているお父さんが赤ちゃんがどうしても泣き止まないのでお母さんを追って家を出てきて、このベンチで休憩しているお母さんと合流する……なんていう話しにして、それにエピソードの順番を変えたりしたら、ほんわかした話しになっていいのにな~ なんて思ってしまいました。
あくまでも私の好みですが……
(2024年11月22日、舞台に近い109シネマズ二子玉川で映画を観て)
監督は 奥山由之
エピソード1 広瀬すず 仲野太賀 脚本 生方美久
エピソード2 岸井ゆきの 岡山天音
荒川良々(いつもだったらベンチでパンを食べているおじさん)
脚本 蓮見翔
エピソード3 今田美桜(姉) 森七菜(妹) 脚本 根本宗子
エピソード4 草彅剛 吉岡里帆 神木隆之介(監督役)
脚本 奥山由之 自身
エピソード5 再び 広瀬すず 仲野太賀 脚本 生方美久
音楽は 安部勇磨
すごい人たちでこの映画が演じられていました。
(このコラムはここで終わり)